東京大学での入学式の祝辞ですが、「孤独を恐れぬ勇気」とはハッキリ言って本当に入学式での祝辞にふさわしい言葉だと思いますよ。
入学式で目標を失ってしまう人もいると聞いています。5月病にならないように頑張ってください。
世界の知の頂点を目指すということは、トップランナーに追いつくことではありません。自分がトップランナーになることです。トップランナーに追いつくことと、トップランナーになることは、きわめて違う―譬えて言えば、富士山とエベレストくらい違う―ことなのです。東京大学は1877年4月12日に創立され、本日ちょうど130周年を迎えます。この130年の間に東京大学が追求してきたのは、トップランナーに追いつくという課題でした。この課題は既に達成されています。様々な世界大学ランキングに見られるように、東京大学は既に大部分の分野で世界トップの研究水準を達成しているからです。
トップランナーに追いつく際には、明確な目標があります。ひたすらその目標に向かえば、追いつくことができるわけです。しかし、トップランナーには模倣すべき目標がありません。トップランナーは、自ら目標をつくり、自らリスクを取り、自らの行動を決断しなくてはなりません。したがってトップランナーは孤独です。ですから、「先頭に立つ勇気」は、「孤独を恐れぬ勇気」と言い換えることも可能なのです。
東京大学が世界の知の頂点を目指すためには、東京大学の教員と職員と学生が、各々の活動分野で「先頭に立つ勇気」を持たなくてはなりません。皆さんは東京大学の学生として、仲間を作り、仲間との連帯を求めながら、同時に「孤独を恐れぬ勇気」を持つ、タフで優しい精神の持ち主に成長してください。
最後に、本日お出でいただいているご家族の皆様に一言申し上げます。
皆様のお子さんは、本日東京大学に入学いたしました。長かった受験の日々を思い返して、皆様の感慨も深いものがおありだと思います。心からお祝いを申し上げます。入学式は皆様のお子さんにとって、世界のトップランナーを目指す新たな旅立ちの日です。この新たな旅は、受験勉強よりもはるかに苦しい、しかしはるかに実り豊かな旅になるはずです。どうか今後ともお子さんを暖かく見守り、励ましてくださるようお願い致しまして、本日の式辞の結びといたします。